火入れ条例雑考#1

Omojiro/ 9月 5, 2021/ 焼畑/ 0 comments

 現在日本国内では、焼畑は森林法第21条が規定する許可がないと実施できません。許可の要件は各自治体が条例で定めています。一読すれば、裁量行政的匙加減というべきものが働きやすい条文となっていることが一目瞭然。どこも同じような内容です。それでもずいぶん違うところもあり、総当りしてみるとおもしろいと思います。が、まずは知っているところ、島根県東部地域からぼちぼちとみていきましょう。たぶん5回シリーズくらいになるかなと思っています。

 さて、第1回(#1)  は、私たちの地元である奥出雲町、そして島根県東部地域についてみてみます。私たちのように申請する立場としては、防火帯と従事者の規定、そして許可期間、この3つが重要な点です。とくに前の2つがより重要。今回は前2つについてみてみますが、これらはクリアーできないと許可がおりないですからね。一方、許可期間は短すぎると、その間天候条件がおりあわず、結局実施できないということになります。
 また、これらの規定がない自治体もあります。広島市がそうですが、昭和59年から改正していないので、申請が以前から止まっているからではないかと推測します。島根県東部地域の場合、平成17年、平成27年前後に改正が行われている自治体が多いですね。

 さて、まず防火帯から、私たちが申請している奥出雲町は、全国的にもおそらくもっとも厳しい規定です。

†奥出雲町の防火帯規定…基本10m以上、傾斜上部等については20m以上。

 焼畑の全国フォーラムでこれを発表したときには、笑いとどよめきが起こったほどです。ま、あり得ないと。小規模だと焼く面積よりも防火帯のほうが広くなります。ほかの地域の防火帯規定はどうか。

†出雲市の防火帯規定……基本3m以上、傾斜上部等については6m以上。
†松江市の防火帯規定……基本5m以上、傾斜上部等については8m以上。
†安来市の防火帯規定……基本5m以上、傾斜上部等については8m以上。。
†飯南町の防火帯規定……基本3m以上、傾斜上部等については6m以上。。

 他県の市町村をみても、3~5mという規定が多いなか、奥出雲の10mは出色であって、過去山火事を引き起こした事例に基づく何かがあるのではないかなあと思います。なぜ10m・20mかについては仮定できることがありますが、またの機会に。

 次に従事者です。近年の日本の焼畑で0.5ヘクタールをこえることはあまりないです。私たちの場合でも最大で0.2でしょう。すると奥出雲町の場合、火入れには最低10人集めておくことが最低条件となります。

†奥出雲町の従事者規定…0.5ヘクタールまでは10人以上。0.5ヘクタールを超え1ヘクタールまでは15人以上

 天候によって日程が変わるのが焼畑ですので、複数の候補日でこれだけの人数を確保するのはなかなか大変です。この点、島根県東部はどこもそう変わりありません。面積単位の異同はありますが最低10人が基本です。ただし、安来市だけはハードルが一段低くなっています。

†安来市の従事者規定…0.5ヘクタール未満は、5人以上。0.5ヘクタールから1.0ヘクタールまでは、10人以上

 なぜかというところについては、宿題として頭の片隅にでもとどめておきたいです。
 安来市の場合、やりやすいことは確かです。え、ハードル下げれば火災等のリスクが高まるじゃない?と考える人は早計。あまりに高い障壁を設けるとですね、申請しない人もふえるわけです。あるいはできないと諦めるか。火入れの目的は何も焼畑だけに限りません。開墾や造林のための地ごしらえ、採草管理など農林業に必要ないくつかのものが含まれています。高すぎる障壁は農林業振興的にもよろしくなくて、適正なところが求められるわけです。
 そういう点で、安来市の場合、従事者最低人員を周辺他自治体より落とした要因があると思われます。少なくとも制定・改正時点で。そこらを含めての宿題です。

 従事者規定でもっとも低いところでは3人という場合もあります。これは大変現実的な線で、基本、家族でできる、やれることを想定しています。鶴岡市の場合がそうです。

†鶴岡市の従事者規定…
(1)0.1ヘクタールまで 3人以上
(2)0.1ヘクタールを超え0.3ヘクタールまで 7人以上
(3)0.3ヘクタールを超え0.5ヘクタールまで 10人以上
(4)0.5ヘクタールを超え1ヘクタールまで 15人以上
(5)1ヘクタールを超える場合 その超える面積0.1ヘクタールにつき1人を15人に加えて得た 人数以上

 温海かぶの焼畑栽培をはじめ、現在も焼畑の盛んな地域ならではといえましょう。いいなあと思います。たしか年間100件以上は申請があると聞いたことがあります。届け出のためのウェブページもあり、書式のほかに地図も!ついています。準備のチェックリストもあって、さすがだなあと感心します。このページの主文の末尾には「火入れ従事者数や防火帯の幅等は、市条例で定められています。事前に確認してください」とあります。そう、やはりこの2点はいくつもある規定の中でも核心の2点なのだなあと改めて思いました。

 鶴岡市の火入れ申請関係一式ウェブページ

 さて、次回は島根県西部をみていこうと思います。ではまた。

◆島根県東部各市町村の火入れ条例(2021/09/05時点のリンク)


松江市

出雲市

安来

雲南市

奥出雲町

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