つねに未完成。
【料理の野生と文化を探る】
Nature and Culture in the dish
A. 在来作物と採集草木調査……年取カブ,ホウコ,ゴロビナ,クマゴ等
The investigation of native crops, collected plants, and trees.
奥出雲町には「正月カブ」と呼ばれるカブが存在したことがいくつかの記録(青葉高著『野菜―在来品種の系譜』1981,法政大学出版局 など)にありますが、地元には記録も記憶も残っていませんでした。然し、去る2016年1月、「そりゃ年とりかぶのことだ」といい今でも大事にしているおばあちゃんにたどりつき、取材することができました。同行された山形大の江頭准教授によれば、全国でもこうした形で残っているカブは数えるほどしかなく、どこも風前の灯火であること、くわえてこの地の場合、民俗儀礼の記憶と結びついているという点では大変貴重であると。
こうした調査活動を続けるだけでなく、本事業では価値を再認識してもらう場をつくり、人の輪をつくり、地域での保全へとつなげていきます。またそうすることが、食文化全体の見直しと再発見につながることを意識してアクションします。
◉断片的な残存をつなぐために、広域での調査を試みます。とくに採集草木については有効だと考えています。現時点での調査予定地域:島根県西部【都賀(旧大和町内)、畑田と赤木、邑南町、吉賀町、津和野町、匹見】、広島県北部、鳥取県山間部、山口県錦町、四国西部山間(西阿波、祖谷)、静岡県井川
◉重点(キーワード)
†. カブの栽培・食制と民俗……年取りカブ(正月カブ)、地カブ、真カブ、平田カブ、畑田カブ、鱒淵カブ
†. ホウコそしてモチの食制と民俗(鳥取県東部山間のヤキモチを含む)
†. クマゴ探訪と種子からの再生
B. ばあさんじいさんに話をきく
Hear stories from elderly.
◉食生活調査の主軸ですが、このシーンでは「調べごと」と同時に、「いまんごのわかいしはそげなもんはたべーへんわね」という言葉をつくりかえていくことをめざしています。「なくしちゃいけん」「のこさないけん」そういう言葉を出す人もいます。じつは前者のほうが大事なものをひとりで懸命に守り育てておられることが多いもののです。もちろん後者も気持ちはしっかりお持ちです。
◉広報…わかったことをまとめ残し、だれでも用いることができるようにします。まとめた書籍の出版を複数継続して行います。
◉重点(キーワード)
†. 味噌、醤油づくりと大豆、麹、麦の文化
†. 春の山あがり(大山さん)と正月・盆行事
B-2. ばあちゃんの料理会
Arranging a gathering to introduce traditional dishes prepared by granny.
◉企画・準備・開催…年間1〜2回程度を予定しています。
現在お休み中です。台所訪問のような形でできないかと模索中です。もと「持ち寄り集会」としてはじめました。開催へのハードルが高く数年未開催でした。ひとりのお宅へ3人くらいが訪問して、という形に改めて続けていきたい取り組みです。
C. 食と自然資源を活かした体験プログラム開発
Development of experience program utilizing food and natural resources
◉ダムの見える牧場が位置する場所をはじめ「谷」を単位としたフィールドにおいて、野外の自然資源と食を結びつけた体験メニューを洗い出し、整理していきます。
◉資源マップも含めて、手順や注意点(安全面)、今後の資料としてまとめます。その場でしか味わえないものを大切にしていきます。
【焼畑・山畑〜人口減少下におけるアグロフォレストリーの模索】
Shifting cultivation ~ looking for agroforestry in areas of diminishing population, looking to pass down folklore, and looking to preserve living traditions.
A. 焼畑実践……荒廃林伐開と火入れ、栽培(播種,間引,収獲)、脱穀調製
ダムの見える牧場の荒廃竹林を伐開し、実験的焼畑を実践する活動は、ボランティアを主体に2015年からはじめており、2023年は9年目を迎えます。当初は人員確保を大きな課題と捉えていました。今は少し違っていて、ひとりならひとりでできること、ふたりならふたりでできること……を大切にしています。いる人、あるもの、その時、その場、……それらのつながりから生まれるものを見つけて育てていくことを目指しています。
焼畑は荒廃竹林を整備し、火を入れるところまでをステージ1とすれば、種をまき収獲し乾燥や調製(脱穀精白など)を行うところがステージ2といえます。また収穫後の土地管理(遷移誘導のための選択的草刈り、高木実生の保全等)、作物の保存・調理、販売など取組のつながりは多種多様にひろがっています。
◉火入れ地の選択……場所よりはとりかかる人員によります。3月〜5月の募集活動をへて決めていましたが、2019年より5年ほどの大枠での計画をもとにしています。
◉作物選択、種の入手……5年間の実践を再検証し、長期的計画のなかで実施する。
◉播種方法・間引き……直播が基本であるが、密度調整や発芽の遅れなど、失敗も多く、覆土や耕起も含めた方法を模索中。
◉収獲・乾燥・調製……実験自給的なものゆえほぼ手作業ゆえ大変手間がかかる。少しずつだが技術向上と方法の改善も進んでいる。
◉畑地と雑穀栽培の拡大試行……上記の調整の手間がクリアーできるのであれば、元来粗放的管理で放棄地での栽培も容易なのが雑穀であるので、販路の目処とあわせて拡大できる場を模索する。
B. 里山管理の民俗知調査…在来産物と自然管理手法について
Folk Knowledge investigation for mountain village management〜a convention product and natural management technique.
A.の栽培法や火入れの方法とも深くかかわる、焼畑の民俗知調査研究活動。
文献調査や❷の食生活調査とも重なる自然管理手法について、過去できるだけの時をさかのぼっての栽培採集そして放牧や狩猟利用の履歴を明らかにすることで、Aの活動へ還元することと、人口減少下にある中山間地の新たな管理手法の開発につなげていく。
温海、椎葉など国内の他の実践地へ研修。またアジア地域への調査研修を計画中。※候補地:スリランカ、ミャンマー、タイ、台湾
【売る、届く、嬉しい、の持続可能な交流】
Ranch Suites Planning and Development Project
売ってウレシイ、届いてウレシイ、そんな交流をめざします。損得も大事でしょうが、うれしくなくちゃはじまらないし続きません。
A. 牧場スイーツ開発支援事業
1次産業の6次化を実現する農産加工品を売り出す企画開発。製品そのものが美味しいことはもちろんのこと、生まれる背景や原料を有む牛のこと、牛が育つ里山のこと、山の草木や土や生き物のことを、日々の暮らしの中に感じたり考えたり取り込んだりできることを目指す。すなわち、シューとともにある価値をつくりだし、つくりだした価値を伝えてその輪がひろがること。その土台をつくることが目標です。
B. 山畑でとれるもの・できるものを売れてるように
焼畑を含めた山の畑で、育て、食べ、開いていく事業。商品化できるまでの質と量を確保するためのあれこれです。「売れる・売れてる」は「だれでも手に入る・市場に出ている」を意味していて、標準語とは違う使い方(意味内容)がこの地方にはあり興味深いです。(2019年〜)
※ふるさと島根定住財団「地域づくり応援助成金事業」(平成28年度)